2026/09/25 07:00
「これは、何料理ですか?」
と聞かれたら、少し困るものがあります。
鹿の肉や筋、腱をじっくり煮込んだもの。
魚の頭や骨、皮から旨味を引き出したもの。
そのときに出会った野菜を組み合わせて、なめらかにしたもの。
もちろん、商品になれば、
「煮込み。」
「ボーンブロス。」
「野菜ピューレ。」
と名前をつけます。
でも、私たちがごはんをつくり始めるとき。
最初にあるのは、料理の名前ではないことがあります。
まず、素材がある。
「今日は、いい鹿が入った。」
「この魚、すごくいいね。」
「この野菜、今おいしそう。」
そこから、
「これを、どうやって食べてもらおう。」
と考えます。
特に魚は、その繰り返しです。
富士の介。
甲州ワイン鱒。
岩魚。
いつも使っている魚もあれば、季節や仕入れによって出会う国産魚もあります。
金目鯛。
太刀魚。
甘鯛。
ウスメバル。
そして、これから先もきっと、まだ使ったことのない魚に出会います。
魚屋さんや仕入れ先で、
「これ、いいな。」
と思う魚に出会ったとき。
最初から、
「この料理をつくるために、この魚を使おう。」
と考えるというより、
まず、その魚を見ます。
頭はどんな形をしているか。
骨はどうか。
皮は。
脂は。
身はどのくらいついているか。
それを見ながら、
「これは、どうしたらおいしく食べてもらえるだろう。」
と考えます。
じっくり煮出して、ボーンブロスにする。
圧力をかけて、骨までやわらかくして煮込みにする。
場合によっては、乾燥させた方がおいしい素材もあります。
素材が違えば、同じ方法がいつも正解とは限りません。
鹿も同じです。
肉。
骨。
スネ。
肩まわりの筋。
アキレス。
同じ一頭の鹿でも、部位によってまったく違います。
やわらかい肉と、しっかりした筋。
旨味のある骨。
時間をかけることで、やわらかくなる腱。
それぞれを見ながら、
「これは、どうしよう。」
と考えます。
野菜もそう。
一年中、まったく同じものがあるわけではありません。
季節が変われば、出会うものも変わります。
色の濃い野菜。
根菜。
葉物。
きのこ。
その時々の素材を見ながら、組み合わせを考える。
だから、J’s Kitchenのごはんには、
最初から完成形が決まっていないものもあります。
まず素材に出会って。
触って。
香りを確かめて。
どう調理するかを考える。
試してみる。
食べてもらう。
そして、
「これなら。」
と思えたものが、ようやく一つの商品になります。
効率だけを考えれば、いつも同じ素材で、いつも同じものをつくる方が簡単なのかもしれません。
でも、日本には本当にいろいろな食材があります。
山にも。
川にも。
海にも。
畑にも。
季節が変われば、また違うものに出会います。
せっかくなら、その出会いを楽しみたい。
そして、みんなにも食べてもらいたい。
そう思っています。
だから、ときどきJ’s Kitchenには、
突然、新しいごはんが並びます。
「今度はこれ?」
と思われることもあるかもしれません。
たぶん、そのとき私たちは、また何かいい素材に出会ったのだと思います。
名前が先にあって、そこに素材を当てはめるのではなく。
まず、素材があって。
どうしたらおいしく食べてもらえるかを考えて。
つくって。
食べてもらって。
最後に、名前がつく。
そんな順番で生まれるごはんがあってもいい。
次は、どんな素材に出会えるだろう。
私たち自身、それを楽しみにしています。
名前のないところから始まるごはん。
それも、J’s Kitchenらしいごはんづくりの一つです。

