2026/06/29 08:00

工房の中に、
やさしい香りが広がります。
長い時間をかけて煮込まれた、
鹿や地どり、魚たち。
鍋の蓋を開けると、
素材それぞれの香りが、
ふわりと立ち上ります。
私たちは、
その時間が好きです。
そして気が付くと、
骨を手に取っています。
残っている肉を外す。
やわらかくなった筋を取り分ける。
骨のまわりに残る、
おいしいところを探していく。
工房の中には、
湯気と香りがゆっくりと漂っています。
骨のまわりには、
時間をかけて煮込んだからこそ残る、
おいしさがあります。
そして骨の中には、
じっくり火が入ることで現れる、
深い旨味があります。
骨髄から生まれる、
どこか甘くて、
奥行きのある香り。
肉だけでは出せないコク。
鍋のそばに立っていると、
その香りが工房いっぱいに広がります。
私たちは、
栄養だけを見ているわけではありません。
その素材が持っているおいしさも、
できるだけ届けたいと思っています。
正直に言えば、
とても手間がかかります。
もっと効率の良い方法も、
あるのかもしれません。
それでも私たちは、
できるだけ手で確かめながら、
作業を続けます。
指先で触れながら、
硬い骨が残っていないか確認する。
食べられる部分を、
丁寧に取り分ける。
地味な仕事です。
それでも、
骨を手に取るたびに思います。
まだ、
おいしいところが残っている。
だから今日も、
一つひとつ取り分けていきます。
手間がかかるから、
価値があるわけではありません。
手間をかけてでも、
届けたいおいしさがある。
そう思うから、
私たちはこの作業を続けています。
骨のまわりに残る肉も。
やわらかくなった筋も。
骨髄の香りも。
私たちにとっては、
大切なおいしいところです。
だから今日も、
富士山麓の静かな工房で、
一つひとつ、
手を動かしています。
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